インド料理にたびたび登場するマスタードオイル。現地では野菜や魚料理に今でも頻繁に使われている植物油ですが、本当に健康に悪いのでしょうか?
インド料理に使われるマスタードオイルとは?
マスタードつまりは、からし菜の種から抽出した食用オイルです。主に北インドを中心に使われていますがベンガル料理には欠かせないオイルです。ベンガル料理というのはインドの東側、ベンガル湾付近の料理です。一部バングラデシュの料理と重なります。
マスタードオイルが体に悪い原因はエルカ酸
マスタードオイルの成分の一つ「エルカ酸」が矢面に立たされました。マスタードオイルはエルカ酸の含有率がとても高いのです。このエルカ酸を含む油をご存知でしょうか?菜種油です。
エルカ酸とは?
主にスキンケア製品、化粧品の保湿成分として広く使われているものです。油絵具の油脂成分でもあります。
マスタードオイルが心臓に悪い?
このエルカ酸を含む菜種油をラットに投与する動物実験でラットの心臓に壊死を及ぼしたことから体に悪いと言われだしました。1955年のことです。その後、この実験を犬、豚、猿などの他の動物にしたところ全く起きませんでした。
実はラットを使った実験で腑に落ちない点は、心筋梗塞といったトラブルは一切なく心筋の壊死のみが起きていたことでした。しかもオスのラットだけだったわけです。さらにラットと人間では消化系も異なる点が挙げられます。
その後いくつかの国で人間を使った臨床研究が行われました。インドでは1976年にマスタードオイルを多用する地域の人々で検証されておりますが、ラットと同様の事例は一例もありませんでした。
「インドの調査では、エルカ酸含有率の高い油を食べ続けるカルカッタ付近と、低いマドラスを比較していますが、きわ立った差はありません」
マスタードオイルの効能
マスタードオイルは普通の植物油と同じく安全にお使いいただけるのですが、どういった効能があるのでしょうか。
まず心臓血管系によく、血液の粘度を下げ、血行改善に効果があります。動脈硬化の予防やコレステロールの正常化にも寄与します。消化器系では胆管を綺麗にし、胆石の予防にもなります。
女性ホルモンバランスの正常化にも効果があり、生理不順の改善、不妊や卵巣の病気の低下、更年期のほてりの改善にもつながります。妊娠期においてもマスタードオイルに含まれるレチノール(ビタミンA)やトコフェロール(ビタミンE)はとても有用です。
油脂の摂取の仕方については、以下の記事で詳しくご紹介した通り、オメガ3、オメガ6、動物性油脂の摂取比率が問題です。現代食で偏りがちな植物油の取り過ぎには注意する必要がありますね。
マスタードオイルのおすすめ
インドが主流のマスタードオイルは、日本であまり多くのブランドがありません。アンビカのマスタードオイルは私のお店でも使っていました。オススメできます。マスタードオイルは酸化しにくい方ではありますが、酸化は徐々に進むため、この分量が最適と言えます。
正しいマスタードオイルの使い方
マスタードオイルは和食のように素材を生かしたシンプルな味付けの料理には代用できません。この油はインド料理初心者にとっても扱いづらい理由は、油そのものに辛味や香りがついているからです。ごま油でコロッケを揚げたり、炒飯を作ったりはしませんよね?
控えめにスパイスを使うと油に溶け込んでいるマスタードのクセだけが際立つことがあります。まず油を温めてスターターシードを入れてサブジを作るといったインド料理にのみお使いください。
マスタードオイルのまとめ
マスタードオイルは健康に問題ありません。1955年のラットを使った実験の結果、人間にも心臓疾患を起こすといった風評が今でも根強いのが「マスタードオイルは健康に悪い説」の原因でした。
どの油もバランスよく摂る事が大事です。
もちろん低温圧搾のマスタードオイルやグラスフェッドギーにしても取り過ぎれば体にとってよくないことは明白ですが、安全性の議論を差し置いて遺伝子組み換えの安価な材料で作られた大量生産の油に比べれば憂慮すべきことは微々たるものではないでしょうか。
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